落ち着いて警察と妻を呼んだ俺。
先に妻の由美。続いて警官2名が駆けつけてくれた。
状況はかなり悪い。
でも俺はやってない。
それはハッキリしている。
まずは、しっかり説明することが先決。
望みが薄くてもパニックを起こしては意味がない。
しっかりと説明するんだ。
正直逃げたい気持ちを抑えて、自分を奮い立たせた。
よし説明するぞ。
「この状況だと、誰がどう見ても私が彼女を刺したと思うと思います。」
「なかなか信じてもらえないと思いますが、よろしければ順を追って説明してよろしいでしょうか?」
警察も妻もうなずいてくれた。よし。
今の俺はめちゃくちゃ落ち着いている。
丁寧に説明責任を果たそう。
由美の顔も希望を持っている表情をしている。
よし。
「まず状況を整理させてください。私はこの女性を知りません。また金銭にも困っておりません。当然知り合いではないので、女性に恨みなどの感情はありません。」
「残念ながら、手には包丁があり彼女を刺した可能性が高いと思います。しかし私は前後の記憶がありません。気づいたときには手に包丁。眼の前に倒れた女性がいたのです。だいぶ私に状況が悪いのも理解していますが、引き続き丁寧に説明させていただきます。」
よし。
自分の感覚では、少なくとも”話が通じる犯人”ぐらいのポジションにはなれた可能性が高い。
ちゃんと落ち着いて対話ができる人間として振る舞えている。
犯人ポジションから抜ける
そう思った矢先に、由美がとんでもないことを口走った。
「犯人はあなたよ。」
え。
「何言って、」
「犯人はあなたなのよ」
いや、ほんとに俺は記憶が
「思い出さない?」と由美。
何も思い出せない。
「あなたは、妻である佳子さんを殺したの。」
妻は由美ですが?じゃああなたは誰。
「あなたは、妻の美子さんに相当な恨みを持っていた。家ではいつも居場所がなかった。」
いやいや、おしどり夫婦なんだけど?この前、第一子生まれたんだけど?
「あなたは、会社でも出世争いに負けて左遷。そのことをグチグチ佳子さんに毎晩責められてた。私はその相談に毎週乗っていたのよ。もうおかしくなりそうだって。子どもはいない。」
いやいや、NTTでAIの研究してて、超順調なんだけど。。。
「あなたはNTTの系列会社。夢がAIの開発。」
慶応の理系。。。
「早稲田の文学部。」
あーーーーーー。なんだ。俺の脳って元から壊れてたんだ。
完
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